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アニメやマンガの雑記ブログ

【感想】「君に愛されて痛かった」は愛と向き合う物語

久々に何度も読み返すほどハマった作品なので感想を書きます。

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あらすじ

引っ込み思案(というか超絶マイナス思考のほぼメンヘラ)の叶井かなえ(高1)が、ひょんなこと(援交現場を目撃される)からキラキラ野球少年の野村寛(ひろし・高2)と出会い、人生を更生していく話と思いきや様々な人間関係に翻弄され(し)ていく話。

かなえちゃんがいじらしくてかわいい

援交やってるのに「いじらしい」って?と自分でも思いますが、知らないおじさんに手をつないでいい?って甘えたり、寛くんに寄せる恋心だったり、とってもいじらしいなって。序盤の嫌われまいとみんなに合わせるところもすごく胸が苦しくなる。

1話で一花ちゃん達と他校(淵ノ宮)の男子たちとカラオケに行くかなえちゃん。「上流階級の晩餐会みたい...ジュース運んでる方が楽だな」ってしょんぼりしている描写があります。
もうこの描写でかなえちゃんのことが大好きになりました。本来の自分のスクールカーストとは違う空間にいるとすごく落ち着かないんですよね。合わせたり機嫌取ろうとして空回り…胸が痛い。
パニックになると周りが見えなくなってマイナス思考の思い込みに囚われて…ってところが、かなえちゃんの場合ちょっと行き過ぎなレベルなんですけど、こういう経験って誰にでもあると思うんですよね。気持ちがわかってしまうだけに、その畳みかけるような心理描写がものすごく恐怖感のあるシーンになっていると思いました。

女子高生がリアル


クラスのカースト最上位から数えて2,3番目、みたいなグループの描き方がすごい。いかにも女の子~な里虹。ちょっとサバサバっぽいけど意外と普通な瑠奈。ぽっちゃりしてるけど、つけまバサバサ見た目ばっちりギャルなとみ子。そしてリーダー格のスポーツ少女っぽい見た目の一花。
あ~~~女子高生のときこういうグループあったわ~…痛いほどわかるわ~…
「うちら友達だよね!」と言いつつ、腹の内ではむかついてたり、いきなりでグループから追放されたり。

人物の背景や小物の描写が細かい

「この人はこうやって育ってこういう性格になったんだ」って裏付け描写がとにかくすごい。
・一花 戸建ての大きい家で両親と3人暮らし。自分の部屋があってドライヤーはダイソン=比較的お金がある家
・かなえ 団地で母子家庭。弟と同じ部屋で二段ベッド。母親から冷遇されている。でも弟の塾代六万でswitchも買ってもらえている=基本お金はあまりない、姉弟への愛情がアンバランス
・鳴海(同じ団地の相談相手の男の子、チンピラの下っ端) スクーター(ミラーがピースの形)ジャージ。でもアルマーニのTシャツ着てるときもある(本物かわかないけど)
・とみ子 イライラしたら過食=結構周りに気を使っていてストレスが溜まりがち
スマホカバーやLINEのアイコンの描写も細かくて好き。

こういう背景描写がしっかりした漫画って説得力があって好き。

かなえと寛の関係性

一話での衝撃的な事件(円光現場目撃され、かなえがキレる)の後、再会時かなえがパニクり寛の目の前で嘔吐。この時点で普通だったら(やばい奴じゃん、関わらんとこ…)ってなるはずですが、寛くんは「勢いで助けちゃったけど、気になってる子の弱い姿を見たら好きになっちゃった」ってことなんでしょうか。出会ったカラオケで中抜けするかなえを追いかけたときから善意と好意がないまぜになった感情を抱いていたと思います(半分一目惚れ)。
ここからLINEでメッセージを交換したりデートしたり試合を見に行ったり…ゆっくりゆっくり二人の関係が進んでいくのが好きです。その間も相変わらずネガったりパニクったり、ぽろっと好意丸出しの恥ずかしい台詞を言ったり、寛のキラキラオーラに浄化されたり…と感情の起伏が激しい。それにいちいち付き合う寛も相当優しいです。

このコマめっちゃ好き。

越智(寛の野球仲間・幼馴染)が寛を諦めさせるために「あいつは誰にでも優しい」とかなえに止めの一撃を食らわすわけですが、多分本当にその通りなんだろうなと思います。優しさの度合いは違えど。

一話冒頭で血まみれで横たわるかなえと犯人らしき男のカットがあります。男の口元のほくろからして寛で間違いないと思います。今のキラキラ寛からこの状態まで何が起こるのか楽しみです。

愛と向き合う物語

ここまで一気に書いて息切れしそうなんですが、とにかくかなえちゃんが本当に欲しいものってお金でも薄っぺらい友人でもなく、愛なんですよね。他人からの愛もだけど、自分自身への愛も。でも家庭はあんな感じだし、援交してもなんにも思わないし、好きってそもそもよくわからない。寛への恋心も鳴海に言われて気づく。でも、他人が他人に向ける愛情には人一倍敏感で、嫉妬してまう。私にも分かるような、分からないような。この描写がとてもドラマチックだけれどリアリティのあるものになっています。


初めて読んだ知るかバカうどん先生の作品は「うんこ花火」だったんですけど、その影響なのかうどん先生のことずっと男性かと思ってました。たまたま見たインタビュー記事みて「女性なの!?」ってかなりびっくりしました。でもかなり納得しました。
https://www.google.co.jp/amp/s/lab.comic.k-manga.jp/udon_interview/amp/
あとここでも人物の背景描写について語られてて「やっぱり意識して描いてるんだ!」って嬉しくなりました。

どんちゃんTwitterを見ると連載を続ける中沢山の苦労があるようですが、書籍買って応援してるのでまったり更新してもらえると嬉しいです。
胸糞って意見もチラホラあると思うんですが、ただの胸糞話では語り尽くせない魅力がたくさん。一花ちゃん関連では確かに痛い描写もありますが、胸糞とはまた違うような...(いや胸糞だけど)とにかく人の強さとか弱さとか考えさせらるなーと思います。

あと、うどん先生の肉体の描き方が好き
かなえは柔らかそう(お尻のカットがすごい)で、寛くんはがっちり筋肉質。おじさんはちょっとだらしなくて、モブは目や口元がブサイク。こういう描き分けが好きです。