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アニメやマンガの雑記ブログ

【感想】不死身の命日/虫歯 を読みました

虫歯さんの『不死身の命日』を読みました。


結論から言います。
私的2020年ベストBL大賞(暫定・以前からの連載物除く)です!!!!!!

あらすじ

大企業を束ねる若き社長・三角冬真は生涯を共にする伴侶を探していた。そんなある日、チンピラに襲われている所を謎の男・フジミに助けられる。お礼にホテルの最上階でディナーを御馳走したところ、トラブルに巻き込まれ、フジミが冬真をお姫様抱っこして地上へ飛び降り、脱出に成功。不覚にもときめいた冬真がフジミを伴侶にしようと奔走する中で、フジミの過去と底知れぬ魅力に翻弄されていく。

もう出だしの時点で!?ですよね。第一話を読んだ私も!?でした。とにかく『!?』
なんだこれは。ものすごい漫画に出会ってしまった…これ一体どんな話になるのか?とぐいぐい引き込まれました。

全体を総括して

とにかく『画面の圧がすごい』んです。
個性的なキャラクター描写はもちろん、世界観の作りこみというか書き込みというか…
なんだか、実際にコメディ映画を見ているような感覚になります。情報量が多いのにテンポ感がいい。
でも決してごちゃごちゃしているわけではなくて適度にデフォルメ化されているから見やすい。
…私の拙い語彙力ではうまく表現できませんが、とにかくすごいので読んでください。

キャラクター、ストーリー、その他小ネタや気づいた点についてそれぞれ語っていきたいと思います。

1.ぶっ飛んでいるのにリアリティがあって愛しくなるキャラクター

※ネタばれあります

【三角冬真】
・主人公
・イケメン、高身長(キリっとしてる)
・御曹司、社長
・自信家

この情報だけみると「あーはいはいスパダリね」ってなってしまうんですが、冬真はそうではありません。さりげない気づかいができるし、驕らず誠実で、努力も怠らない。でもどこか世間知らずで声がでかくてうるさい!でも一途!!このキャラクター描写がとても瑞々しくていい。
あと男らしくてビッグマウスのくせに反応が超乙女だったり、ひそかにサザンを好んでいたり、全体的に線が細くてどこか頼りなさ気な雰囲気が良いです。(個人の感想です)

【フジミ(藤宮恒星)】
・とにかく体が丈夫な謎の男(後に家出した御曹司と判明)
・喧嘩が趣味
・中華屋でバイト
・柔らかい雰囲気、普通~っぽいイケメン

もうね、にこ!って笑う初登場シーンでもう心を射抜かれましたよ。うわー絶対いい人だって。
喧嘩が趣味で(これについては後述)中華屋でバイトしている好青年。私はコスチュームものに弱いのでチャイナ風のバイト着で働いている姿にドキー!としました。
高層ビルから飛び降りたり、あり得ない速度で道を駆け抜けたり、熊を倒したり冬真を抱いたりするわけですが、常に想像の斜め上を地で行く感じがすごい。でもなんか納得しちゃう。そんな底知れぬ魅力の持ち主。

2.コメディタッチで瑞々しく描かれるストーリー

この作品を読んで、シリアスやドラマチックだけが感動じゃないんだな~!!って改めて痛感しました。
読むだけでウルトラハッピーになれるから。本当に。

★善意と悪意
初対面で一緒にビルから飛び降りてフジミに惚れてしまった冬真さんですが、本人から「人を殴るのが好き」と聞いて「何だと!下劣!騙したな!」と憤慨します。でもその帰りに偶然殴り合いをしているフジミを見てしまい、そのあまりの純真さと美しさに惚れ直してしまう。
フジミもまた冬真の身体の美しさに惚れるんですが、この「お互いがお互いの身体に惚れている」ってすごいことだなって。
冬真は御曹司として様々なしがらみに囚われていると思います。幼いころからきっと普通の人以上に他人の善意と悪意の間に身を置いてに生きてきた。だからこそ善意も悪意もなく身体一つで戦っているフジミに惚れたのかなーと。
冬真は地位もお金も何もかも持っているわけですが、それを抜きにして冬真自身そのものに惚れてる。なんせ身一つで生活しているようなフジミにこう思われるなんて、冬真にとって多分こんなに嬉しいことはないと思います。

あと、普通に身体に惚れるってエロくていいよねって…


★不死身の”命日”

フジミは喧嘩をすることで「自分が生きている」と実感しており、体が丈夫なので死ぬことはないと思っていた。しかしある日体が動かなくなり「死ぬってあるんだ」「このまま山になるのかな」という状態になったところを冬真に助けられます。(その間冬真はフジミに発情してるし、ただの風邪でした)

で、そのあと冬真の裸を見て興奮しすぎて鼻血を出すんですが、なんせ身体から血が出るのが初めてだったフジミ。このまま血が止まらなかったら死ぬよなぁ=「死ぬ理由冬真さんがいいです」という告白。「死」という言葉が口から発せられるくらいには不死身かもしれなかったフジミにとっては死は重大。血が出た=自分は不死身ではなく死ねるただの人間だったということが証明されました。なので、冬真さんがフジミの生きる理由になったんですね!ウワーーーッ!!

そしてそのあとのフジミに「おれ冬真さんが特別一番誰より好きです」と言われた冬真の可愛い顔と言ったら…
めでたく二人は最終話にしてついに結ばれるわけですが、ここでもタダでは結ばれない虫歯さんワールド。もう本当最高でした。
良すぎて言葉にできない。すみません。とにかく二人が可愛い。

・ふじ‐み【不死身/不▽仁身】 [名・形動]
1 不死であること。どんな病気・苦痛・傷・打撃にも耐えうるからだであること。また、そのからだやそのさま。
2 どんな困難にもくじけないこと。また、その人やさま。
・めい‐にち【命日】[名]
故人が亡くなった日にあたる、毎月または毎年のその日。
(いずれも出典:デジタル大辞泉小学館))

冬真と生きることを決めたフジミは「死ぬ理由冬真さんがいいです」と、文字通りの「不死身」である自分を捨てます。(=不死身の命日)
同時に冬真から屋号として新たに「不仁美」という名前を与えられ、もう一つの「命(のはじまりの)日」となりました。
このね、タイトル回収。素晴らしいです。素晴らしい。拍手。

3.その他小ネタ

①帯について
書店で購入したんですが、帯も表紙も目を引いてBLコーナーの中でもめちゃくちゃ目立ってました(笑)すぐ見つけられました。カラー表紙のなかだとモノクロって映えるね。
「スーパー攻め様になりたい
受け!!!!!!!!!
事前情報無しで今回この本を買ったんですが、この時点で「あーこの表紙のイケメンが受けなのね」って分かっちゃった。なるほど~~~~

本編では冬真がずっと「フジミのことを抱きたい、好きって言わせる」と豪語しているんですよね。しかし読者は神視点で「とかなんとか言ってるけどこいつ受けなんだよな~w」とちょっとニヤニヤしてしまう。コメディテイストのこの作品だからできる仕掛けですよね。
最初は冬真が抱くつもりでいたのにフジミから「冬真さんを抱きたい」って言われ続けて最後の最後で「抱かれたい」って告白して受けになるんですよ。うわーっ愛おしい。包容力…

一回記憶消して、『冬真が受け』っていう情報無しで不死身の命日を読んでみたい気がする。

でもぶっちゃけこのカップルに関してはどちらが受けでも攻めでも問題ないというか、お互いが唯一無二の存在で、心のつながりがものすごくピースフルでハートウォーミングなので…でも幸せならOKです!!!

②扉絵について
第一話の扉絵

フジミ
富士山
冬真
スカイツリー

って構図になってるんですけど、作者である虫歯さんのTwitter見たらこんなことが書いてありました。
https://twitter.com/64ba_a/status/1107648051722645505?s=20
なんという…なんという…ちんこを山や建物に例える人を初めて見た…
フジミは自然界のナンバーワンで冬真は建造物(人工物)のナンバーワンなのね…

3話のお正月みたいなおめでたい雰囲気の扉絵も好きです。

おわりに

もう、お互いがお互いの存在理由みたいな、相思相愛みたいな、好きな感情がダダ漏れてるBLがちょお〜〜〜〜〜〜〜好きなので本当に出会えて良かったです。虫歯さんの他の作品も早速ポチリました。電子じゃなくて紙で読みたい!!そういう作家さんです。

最近コロナで気がめいってる中でこういう本を読むことができて本当に良かったです。
ハッピーとエロは世界を救う…

不死身の命日 (eyesコミックス)

不死身の命日 (eyesコミックス)

  • 作者:虫歯
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: コミック